事業基盤の強化に必要なマネジメント標準化活用編

標準とは、「言葉」や「文字」といった人と人がつながるインターフェースであり、標準が存在するからこそ、人間同士で情報交換ができます。また、ネジのような「物」の仕様を統一することで、大量生産が可能になり、品質管理により社会・消費者の安全・安心を確保できるようになりました。

このような安全・安心を中心とした高品質な製品・サービスを支えるための「基盤的活動」としての標準化は、ほかにも以下のような効能を発揮します。これまで我が国では、「基盤的活動」による標準化を積極的に進め、特に高品質な製品の製造を強みとしながら、経済・社会システムの基盤を作ってきました。

「基盤的活動」としての標準化が持つ効能

生産費用の低下
製品等の仕様が、競合他社との間で共通のものになることで、生産プロセスが合理化され、コスト削減と大量生産が可能になる。
既存市場の拡大
他社の製品等との間で、仕様の相互乗り入れ(製品間の互換性や整合性)が実現されることで、購買側の利便性が高まり、市場そのものの拡大につながる。
市場参入の促進
製品等の安全性や信頼性が、一定の権威(ISO、IEC、JIS等)の下で担保されることは、市場参入を促進する効果を持つ。(例えば、自治体における公共調達とJIS、多国間貿易と国際標準)
相互理解の促進
用語や記号、設計法、評価法、生産方式などが共通化することで、異なる製品が無秩序に生産されることなく、供給側における関係者の相互理解を促進する。
(出典:日本産業標準調査会 基本政策部会 取りまとめ―日本型標準加速化モデル―)

しかしながら、グローバル市場の発展やDXといった技術革新が進み、類似品質の製品がどこでもすぐに安価で大量生産される現代において、既存市場でのシェア争いは限界を迎えています。また、顧客ニーズにおいては、高品質を当たり前としながら、さらなる多様化・高度化が進んでいます。

このような状況において、顧客から選ばれ、成長し続ける企業となるためには、品質と価格以外で、課題の解決などを見据えた新たな「評価軸」や「付加価値」を作り出すことが必要となります。

標準化には、「基盤的活動」以外に、このような「評価軸」や「付加価値」の策定を目的とした「戦略的活動」があります。戦略的に製品・サービスの「評価軸」を確立することで、自社の製品・サービスにとって有利な市場を創出することが可能となります。

「戦略的活動」としての標準化が持つ効能

新たな価値の創出
価格と品質以外の新たな価値を、標準化によって生み出すことが可能となる。製品標準だけでなく、サービス標準を通じても、同じ効果が期待できる。
市場創出の主導権確保
製品等が市場へ普及した後ではなく、製品等の開発中に規格化に取り組むことで、標準開発のイニシアティブを得て、より一層の市場創出の確度を高める。
自社製品の差別化
標準化が自社技術の公開といった側面よりも、むしろ一定の基準による差別化を通じて、自社商品の強みを見える化し、競争力を強化できる。
研究開発への好影響
社会実装を目指す開発研究については、その初期の段階から、標準化戦略に取り組むことで、需要側のニーズを作りこむことができる。結果として、研究開発の方向性と水準を適正なものとすることが可能になり、市場を創出できる商品が生まれる。
(出典:日本産業標準調査会 基本政策部会 取りまとめ―日本型標準加速化モデル―)

本ページでは特に、「戦略的活動」としての標準化をどのように活用すれば価値づくりができるかを考える際に役立つポイントや経営情報を発信しております。